【小太鼓小話】コンサートスネアとドラム用のスネアの違い
打楽器をやっている人なら一度は叩くであろうスネアドラム。
基礎練習にしろ、ドラムにしろ、打楽器…厳密にはスティックを使用する楽器をやるうえでは必ず通る打楽器の代表ともいえる楽器です。
そんなスネアドラムについて必ずついて回る疑問があります。
「コンサートスネアドラムって、ドラムのスネアと何が違うの?」
ということ。
今回はこの違いを”自分で”判断できるようになるよう解説していきます!
「これはコンサートスネアだけどこれは違う、あぁでもこのサイズはコンサート…」
なんて言い始めてはきりがないので、ご自身で分かるようになっていただくのが一番早く実用的なのです!
スネアドラム(小太鼓)って結局何?
まずスネアってなんだろうという話。
大体14インチで…いやでも10インチのスネアもある。
響き線(スナッピー)がついていて…いやでもない物もある。
結局スネアってなんなんだぁ!
という人のために、簡単にまとめます。
スネア=スナッピー
Snare On、Snare Offといった表記、見たことありませんか?
小太鼓のソロ曲なんかをやったことのある人なら見おぼえがあると思いますが、これはスナッピーをつけるかどうかの指示です。
これに書いてある通り、Snare、スネアというのは響き線やスナッピーのことを指します。
ドラムは皆さんご存じ、太鼓のことを指します。
ということは、
スネア=響き線
ドラム=太鼓
→響き線のついた太鼓
という意味なんです。
響き線の無いスネアドラムがある理由
「え、じゃあなんでスナッピーのついていないスネアドラムがあるの!?」
というと、それは僕らがスネアドラムと呼んでいる物からスネアを取り除いたり、スネアドラムと同じ役割をスナッピーの無い太鼓で使用したりすることがあるからだと思われます。
日本語の小太鼓とスネアドラムの意味がごちゃごちゃになっている、というとわかりやすいですかね。
まぁ、現代でも基本的に小太鼓やスネアドラムと言えばスナッピーのついた太鼓の事なので「派生形」と思っておくとよいでしょう。
コンサートスネアとそれ以外の違い
多分この記事を読んでくださっている方が一番気になっているのはココでしょう。
スネアドラムは一般的に普及している形として3つあります。
その各々の特徴や求められるキャラクターを紹介しながら、その違いについて解説します。
コンサートスネアドラム
オーケストラや吹奏楽、ブラスバンド等で使用されるタイプです。
コンサートスネアというのは生音が基本です。
オケや吹奏楽、ブラスバンドというのはどうしても人数が多かったり、演奏する場所もホールや教会などがメインですから響くことで音がぼやけます。
その中でも埋もれない存在感と音の良さが必要です。
あとは本当に少しの表現の違いが印象に大きく影響するので、奏者の演奏をどれだけ正確に表現してくれるのか、またどれだけ幅広く表現できるかが重要です。
ドラムセットのスネアドラムとの一番の違いとされるのがこのレスポンスと表現の幅の違いですね。
pppでも太鼓が良く鳴り、fffの強打を音として表現でき、早いパッセージをも鳴らしきる。
ドラムセットをメインでやっている人にはイメージがつきにくいと思いますが、この違いが演奏に大きく影響します。
ドラムセット
ドラムセット内に組み込まれているスネアドラムは先ほどのコンサートスネアとは相対する特徴が求められます。
それは、音一つのキャラクターです。
コンサートスネアでは奏者の技術をいかに正確に幅広く表現できるかが重要でしたが、ドラムセットではその性能は余り必要ではありません。
なぜなら、演奏する環境として楽器数が少なかったり、マイクを通すことが多かったり…と、コンサートスネアとはシチュエーションが違うからです。
それよりも、1音のキャラクターがいかにその演奏の中で味をつけてくれるかが重要になります。
だからこそ技術的な余裕もできますし、選択できる素材や構成、作り方も制限が緩みます。
その結果として、多種多様なタイプのスネアドラムが生まれ、またそのチューニングや演奏法によって数多くの音楽にキャラクターを落とし込んでくれます。
これがドラムセットにとってのスネアドラムです。
まぁ殆どのスネアドラムはこれに分類されますし、あとで紹介しますがコンサートスネアとそれ以外との境界が曖昧なのはこの多様性ゆえにあります。
いかにもコンサートスネアライクなものもありますし、コンサートスネアと呼ばれるスネアドラムをドラムセットに組み込む人もいます。
マーチングスネアドラム
マーチング、いわゆる複数人数による野外での演奏を前提とした太鼓なので上2つとは全く違う方向へ進化してきた楽器です。
まず何といっても特徴的なのはその音色。
野外という響かない場所でいかにして音を遠く。かつリズムを正確にハッキリと届けるか、それがマーチングドラムに求められるものです。
そのため、特殊で頑丈なヘッド(皮)を使用して限界までカンカンに張ることで余韻がなく高音の響く音色を作ります。
また、画像のように部品が大きかったり、シェル(胴)が深いのも特徴的です。
これらに関してはまったくベクトルが違うため、今回は割愛します。
しかしながら、この独特の進化を遂げたスネアドラムにしか表現できない音もあるというのが何とも興味深いです。
お時間があれば是非YouTubeなどで演奏を見て、マーチングドラム特有の奏法や音色、フレーズ感を聴いてみることをお勧めします!
コンサートとそれ以外の違いはない?
今まで何が違うかについて話してきたくせに矛盾した話をします!!
ドラムセット用のスネアドラムをコンサートスネアとして使用する例、実は結構あります!
というのも、コンサート用スネアとして明言され始めたのは歴史から見ればそう古い物ではなく、つい20~30年前では当たり前のようにドラムセット用のスネアとコンサート用のスネアが混在していました。
その代表ともいえるのが、あのLudwig LM400です。
学校や団でこれを使っていた!という人も多いのではないでしょうか?
なにせ約70年前から現在に至るまで、ずっと世界中のドラム業界の最前線に立ってきた超絶ロングセラーモデルです。
もちろん年代ごとに仕様やキャラクターの違いはありますが、それでも常に標準的なスネアドラムとして業界に君臨してきました。
そして皆さんご存じ、これはドラムセットで使用されてきたスネアドラムです。
様相も、いかにもドラムに組み込まれているスティールのスネアって感じですよね。(正確にはアルミ主体の合金です。)
しかし、この太鼓は現在でもプロや音大生がクラシックの現場で使用することがあるぐらい、いまだに根強い支持を得ている楽器なんです。
5万円程度の価格ながら、クラシックで求められるレスポンスの速さやその音色の幅、何よりその歴史に裏付けされた信頼があるので愛用され続ける太鼓です。
というLM400はなしは長くなるので置いておいて…
お伝えしたいのはLM400 の良さではなく、言ってしまえば「使えれば何でもよい」という事なんです。
「コンサートスネアとはこういうものだ」
という暗黙の了解のようなものはありますが、実際は曲として求められている音が出ればよいのでドラムセット用のスネアドラムを使っても何ら問題はないのです。
ほかの例を挙げると、「NOBLE&COOLEY(ノーブル・アンド・クーリー)」や「CRAVIOTTO(クラビオット)」のスネアドラムはクラシックでの定番的なブランドですが、ドラムセットで使用される方もかなり多く、またどちらのメーカーもドラムセット自体を作っているのでその線引きの曖昧さを体感していただけると思います。
要は、「使えれば何でもよい」ともいえるということですね。
まとめ
いかがでしたか?
結論としては、「コンサートとドラムセットに求められるものが違うけれど、楽器自体の線引きは曖昧」ということですね。
演奏する際には、技術だけでなくそれに求められている音色や環境に目を向ける事も必要ですから、このスネアドラムの違いというのは奏者として常に考えねばならない要素の一つです。
最初は不思議に感じるかもしれませんが、音作りの第一歩だとおもって頑張ってみましょう!
各々のジャンルのチューニング方法や選び方も今後執筆していこうと思うので、是非ご確認ください!
それでは!